大手事業会社での法務
多くの方が思い描く法律事務所での勤務の他にも、弁護士として活躍できる場所はたくさんあります。その一つが、大手事業会社の企業法務に携わることです。一般企業で法律の知識を生かして働くということに、いまいちぴんとこない方も多いかもしれません。しかし実際のところ、金融関係、情報通信関係、メーカーなど多様なフィールドの大手企業で法務部というものがあるのです。そしてその業務内容も、契約法務、コンプライアンス業務、商事法務などをはじめとした幅広いものとなります。
これらの分野では弁護士として備えている法律の知識を最大限に活用できますし、ビジネスの最前線で実務体験を積むことによって新しく得ることのできるスキルなども多くあるでしょう。さらに通常、大手の企業では毎年担当の部門を変えるジョブローテーション制度が設けられています。そのため一つの専門的な分野にとどまらず、幅広い分野での法務にまつわる知識と経験を習得できるのが大手事業会社で働く最大の利点ともいえます。総合的な法務経験は、法のプロフェッショナルとしてのキャリアを築いていく際の大きな強みになりますので、どのような場合にも大手事業会社の法務に従事することは決して無駄にはならないでしょう。
現に企業内弁護士の数は近年著しく増加してきており、その数は2001年から2015年で20倍以上にも膨れ上がっています。コンプライアンス業務の向上や、法的な問題に社内で対処したいといった理由から、積極的にインハウスロイヤーとして弁護士を採用する企業も年々増えてきていることも大きな理由でしょう。
勤務時間などの点から、弁護士事務所で働くよりもワークライフバランスが保ちやすいという利点もありますし、大手企業のインハウスロイヤーは給料面などで通常の社員よりも優遇されていることも珍しくありません。しかし、専門知識だけでなくある程度の語学力も就職の際に求められることも多いのは事実です。大手事業会社の法務に携わるのを希望している方は、事前に意識して英語力を高めておくのがいいでしょう。
金融機関や不動産会社での法務
大手事業会社と並んで、金融機関や不動産会社も企業内弁護士としての人気の就職先です。これらの機関に弁護士として勤務することで、金融法務や不動産法務にまつわる知識をより深めることができ、法律事務所ではできないような経験も積めます。
金融機関での法務内容は非常に幅広く、SPC(特別目的会社)の設立、M&A(合併や買収)関連の法的業務、新商品・サービス開発の際に法的アドバイスをする、与信・受信業務の紛争処理などがあります。高度な法務に従事することになりますので、金融機関に入ってこれらの分野に携わるには、金融商品取引法や証券取引法などの高い専門知識と分析力が必須となる可能性が高いです。またチームのメンバーとしての高いコミュニケーション能力や、金融機関の一員としての責任・品位ある行動は必須です。金融機関と並んで高い法的知識が生かせるのが不動産業界です。
不動産法務に従事するにあたって、宅建法や建築基準法などをはじめとした不動産関連法の専門知識が必要になってきます。この業界に弁護士として就職を希望している場合は、事前にある程度の知識を備えておくといいでしょう。最近では土地や建物を投資目的で購入する人が増えてきており、首都圏を中心とした土地の再開発も盛んです。そのため、不動産ファイナンスや不動産取引で発生した問題の処理、契約や取引に関する法律的な業務、法律に基づいたアドバイスなどが中心的な不動産法務となるでしょう。
金融機関と不動産会社はどちらも高度な専門知識が求められる分野ですので、今まで培ってきた法の知識だけでなく、新しく勉強しなければならないことも多いかもしれません。しかし、弁護士としてのスキルや法務経験を大きく向上できることは間違いないでしょう。
ベンチャー企業での法務
よく耳にするベンチャー企業も、弁護士として法の知識を生かして活躍できる場所の一つです。ベンチャー企業といっても様々ですが、基本的に組織がコンパクトで担当が細分化されていないことから、幅広い法務分野で活躍して総合的な法務経験を高めることが期待できます。
特に上場準備をしているベンチャー企業では、コンプライアンスの推進や内部統制の強化など、法務を超えた業務にも携わることができる可能性があります。ベンチャー企業が大手企業や金融業界と異なるのは、専門的なフィールドの高い専門知識よりも幅広い知識と柔軟な対応が求められる点です。
基本的に経営スピードも速く新しい事業戦略を次々に打ち出していくといった社風ですので、法律の知識に基づいて経営者に法的なアドバイスを行っていく重要な役目もあります。経営者と二人三脚で企業の成長に貢献し、より良い戦略結果を出していくという非常にやりがいのある環境でしょう。結果によっては成果主義的な昇進も望めますし、何より幅広いスキルや経験が積めますので、野心のある方にはぴったりの就職先です。